最終追記:2018年05月01日更新

循環は簡単に崩れてしまう

【ながら加藤建築】日本の仕事、日本の山

日本家屋が減ってきていることで日本の職種にも異変が起こっています。

日本家屋にまつわるいろいろな職人さんが
どんどん消えていっているのです。

墨打ちと墨壷」というコンテンツで僕が愛用している墨壷を作る職人さんの話をしました、その墨壷の職人さんも日本に数人だけになっているとお伝えしました。また、「厳しい人が引き締める~棟梁は怖いのか?~」というコンテンツでは厳しさの必要性について書きました。他にも「先人たちの知恵」というコンテンツでも鉋削りについて「ハエが滑って転ぶぐらいにツルツルに削れ!」と言われた話を少しお伝えしました。本当にそれほどの微細なところへの拘りで後々、命取りになることもあるからです。 少しのズレから歪みが生まれ、それが家屋の強度に関係します。

そんな厳しい世界を極めていく人がいなくならない限り、そして減ってきても『厳しい世界』の中だからこそ、技術は伝承されていくのだろうと僕は信じてやみません。つまり必要とされる仕事があればその先にその道具を作っている職人さんがいればバランスは保たれるのではないかと思うのです。

使う人がいなくなれば、作る人も消える

【ながら加藤建築】日本の仕事、日本の山

カンナ、ノミ、ノコギリを使わなくなるということは、それを使う職人さんだけじゃなく道具を作る職人や、刃物を作る鍛冶屋もいなくなっていく……ということです。 鍛冶屋がいなくなると、研石を作っている石屋もいなくなります。
そもそも、包丁も鍛冶屋が作ったものではなく外国製のステンレス製などが増えていますよね。 最近は、店に研石を置いているのを見たこともありません。研ぎ方を知らない人も多いようですし、人工的な使いやすい研石が売っているようです。
このように、ひとつの文化が崩れることによって循環していたはずのいくつもの仕事のループがあっという間に壊れます。

【ながら加藤建築】日本の仕事、日本の山

日本家屋減少が及ぼした今の日本の山、山林

家大工による建築方法では、時間はかかりますが、建った後も長持ちします。 長持ちして、世代を超えて受け継がれている間に、また山林の木が育ちます。その育った木で、また家を造るのです。

【ながら加藤建築】日本の仕事、日本の山

そうやって、外国から輸入する必要もなく、日本の風土に合う、日本の材木が使われ、うまく循環していたわけです。 日本の山林と、日本家屋、見事な連係プレーだったのですよね。建て替えの周期が短くなり、海外から材木を得ないと間に合わなくなってしまったんです。

【ながら加藤建築】日本の仕事、日本の山

「厳しいのが嫌、もっと楽、自分だけ得したい」

共存の循環のループから誰かひとり抜けてしまうと、後はもう、一気に崩れてしまうんですね。そうやって失われてしまったもののなかに大切なものがあったんじゃないかと僕は思うんですがね。
エコ住宅」で手刻みと日本の山林について書いています、ぜひご覧下さい。