【建前を行う意義とは?】

日本では昔から、家屋の建築で骨組みまで組み立て終えた時に、お祝いの儀式を行っていました。

その儀式のことを「建前(たてまえ)」と言います。

他にも「棟上げ(むねあげ)」「上棟式(じょうとうしき)」という呼び方もありますが、内容は同じです。

建前には「家屋が最後まで無事に建てられますように」という願いが込められています。

また、その家屋に住むご家族が「地域の方々と仲良くなり、仲間として迎え入れてもらうため」の大切な儀式でもあるのです。

【家族と地域の絆を深める「餅投げ」という風習】

建前のやり方は地域によって異なるようです。

赤飯を配るところもあるそうですが、ながら・加藤建築のある東三河地域では「餅投げ」と呼ばれるやり方で行われます。

餅投げは、施工主さんが用意した餅を建物の2階からばら撒いて、集まってもらった近所の方々に拾ってもらう、というものです。

用意する餅の量は決まっているわけではなく、施工主さん次第となりますが、ある建前ではトラック4杯分(!)も用意されていて、すべて撒き終わるのに何分もかかった経験があります(笑)

もちろんこれは稀なケースですが、現代は「建売の家」を買う時代ですので、徐々に餅投げの風習も廃れつつあり、とても寂しく感じております。

先ほども申し上げましたが、餅投げは「施工主さんご家族と地域の方々との絆を深める大切な儀式」です。

素晴らしい日本文化の1つとして、後世に伝えていきたいと考えています。

【餅投げの流れ】

昔は家を建てるということは、元服、結婚、出産、お葬式などと同じく、家族にとって大きな行事の1つでした。

ですので、餅投げの下準備は、施工主のご家族全員で行います。そして当日は、男性陣が撒くことが基本です。

東三河地域では、餅投げが行われる日に、目印となる「竹の笹」を家の目立つところに立てておきます。

すると、それを見た近所の方々や子供たちから「餅投げは何時からですか?」と声がかかります。

餅投げは基本、誰でも参加できますので、開始時刻が迫るにつれて多くの方々が集まってきます。

【餅投げは「幸せのお裾分け」!】

施工主Hさんの場合、Hさんご本人、Hさんのお兄さんとお父さん、そして棟梁の僕、という男4人で、1俵分のお餅を撒きました。

まず始めに、家の4角に向かってお餅を撒きます。

このお餅を手に入れた人は、次に家を建てることができると言われています!

結婚式のブーケトスのような、縁起担ぎの意味合いが込められているのですね!

その後は、軒先の方に向かって撒きます。

またお餅のほかにも、お菓子、タオル、手ぬぐい、お金なども、一緒に撒いていきます。

お金に関しては、7778円、8888円など「縁起の良い数字の金額」を小銭で用意しておき、半紙に包んでばら撒くのです。

このように餅投げには「来てくださった皆さんにも幸せが届きますように!」という願いが込められています。

Hさんの建前には、なんと150人強の方々が来て下さりました!

皆さんの楽しそうな顔を見て、僕は確信しました。

Hさんご家族は新築後、必ずご近所さん達と仲良く暮らしていけるだろう、と!

【餅投げにまつわる方位の豆知識】

それでは最後に1つ、餅投げにまつわる方位についてお話をしたいと思います。

先ほど記した「家の4角に撒くお餅」は、「四方餅(しほうもち)」「角餅(すみもち)」と言って、通常のお餅の数倍の大きさがあります。

このお餅は、家の東西南北を守ってくださる神様へ、感謝の気持ちをこめて撒かれるもので、持ち帰った人は「焼き餅で食べてはいけない」と言われています。

昔の人は家を建てる際、方位をとても気にされましたのですね。

あくまで噂ですが、「鬼門」や「玄関位置」などを気にせず建てられた物件は、なかなか売れない、と聞いたことがあります。

方位について詳しく知りたい方は「風水と大工のお話」というコラムがありますので、宜しければご覧ください。