実は気密性が高い日本家屋

【ながら加藤建築】快適な家は不健康

日本家屋というと、「すきま風が吹き込んできて、気密性が低い」とお思いではないですか? 実は、そうでもないのです。

ちょっと昔の農家のことを考えてみましょう。農家の人は、田畑から土だらけで帰ってきて、土埃を家の中に持ち込んだはずなのに、シックハウスなどの話はなかったようですよね? なぜでしょうか……。

実は、答えは「段差」にあります。当時の家の玄関は、土間でした。そのまま台所に続いており、大きなかまどがあります。京都方面では「おくどさん」と呼ばれています。水道がなかった時代には、そこに水瓶(みずがめ)もありました。水を汲んできては、貯めておいたのです。台所は、外から野菜を運んだり、水を運んだりするので、土足で入れなければなりません。それが、土間です。だから、部屋の床と土間の床には、段差(高さ)があったのです。

しっかりした段差があるということは、土や埃が部屋に上がる可能性を低くします。日本家屋の場合、床の高さは60cmほどあります。今日のマンションなどでは、3~5cm程度です。これだと、どうしても外の埃が、部屋の中に入ってしまいますね……。時代とともに床の高さは変化しているのです。

昨今は、「バリアフリー」が注目されるようになったこともあり、フルフラット設計が増えてきています。家族みんなが快適に、しあわせに暮らすためには、バリアフリーは大切ではありますが、埃が移動しやすくなってしまったことも事実です。

また、洋間が増えたことも埃の問題には関係があります。意外かもしれませんが、実は、ふすまや障子などの建具は、とても気密性が高いのです。敷居の溝にしっかり建具がかみ合わさるので、埃が移動しにくいのです。一方、洋間でよく使われるクローゼットのレールの場合、床上から1cm~2cmほどの隙間が開いています。衣類などの埃が、部屋の中に入りやすくなってしまいます。ガスと水道が普及したことにより、土間の台所がなくなり、部屋と同じ高さの床の独立キッチンになりました。さらに、LDKという間取りで、食べる場所と作る場所が隣り合わせという台所になってきています。部屋のすぐ横に水周りがあることになり、湿気が部屋へ移動しやすくなっているのです。

加えて、最近は、寒さ対策のために、風の流れよりも、気密性や断熱性を重視する家が増えてきました。また、風の流れを意識するよりも、デザインを重視する傾向にあり、窓も小さめのものが流行っています。自然な風の流れが活かせないので、24時間換気扇を回しっぱなしにしなければ、家の中を空気が循環しないということさえもあります。「見た目」を重視したあまりに、ムダなエネルギーを消費しなくてはならないのでは、ちょっと残念ですよね……。

昔ながらの家は、確かに寒いです。しかし、自然な寒さが人を健康にしている面もあるのではないでしょうか……。

【ながら加藤建築】快適な家は不健康

「冬は寒く、夏は暑い」。これは自然なことです。常に快適な温度にしていると、人間が本来持っている体温の調節機能に支障をきたし、基礎体力が弱くなる、ということを聞いたことがあります。たしかに、昔に比べて、気温も上がっているので、「昔と同じようにしていれば大丈夫」ということはないでしょう。適切にエアコンなどの空調設備を利用することは必要です。

僕が設計する家では、窓をとても大きく取ります。180cm以上の大きな窓にして、風の流れを考えて設計します。そのため、自然な風の流れや自然の力を十分に活かして、温度や湿度を調整できるのです。もちろん、気密性重視の方には、ご希望に沿うことができます。ご家族が快適で健康な生活ができるように、風の流れや気密性をバランスよく取り入れて設計します。「風の流れを活かす」といっても、隙間だらけの寒い家を造っているということではないです(笑)。

【ながら加藤建築】快適な家は不健康

気密性にこだわり過ぎて、換気扇を回し続けるよりも、自然な外気を取り込めるような、風の流れにこだわる設計をお勧めしたいのです。自然な風や光をどれだけ取り入れられるかで、住まう人の健康は大きく変わると信じています。

そして、風通しのいい家というのは、木が腐りにくいのです。表面的な「快適さ」「便利さ」を追求しすぎると、家族の健康を奪うことになりかねません。長い目で見て、「本当に快適な家」を建てていただきたいと思います。

本当に快適な家とは

ちょっとしたすきま風があっても、おいしくて新鮮な空気を運んできてくれるかもしれません。段差があっても、それが埃を食い止めてくれているかもしれません。段差があっても、自分の足腰を動かす練習になって、健康を守ってくれるかもしれません。工期が長く、建築時に多少のお金が掛かっても、土壁が光熱費というランニングコストを抑えてくれるかもしれません。

【ながら加藤建築】快適な家は不健康

あなたやご家族が考える「本当に快適な暮らし」とは、どんなことなのか、長期的な目で見て、選んでいただければと思います。ながら・加藤建築では、「快適な暮らし」を考えるお手伝いをいたします。